砂灸の由来について

今から約300年前(江戸時代中期と思われます。)に修行中と思われる真言宗の僧侶が当家のあるこの地区を訪れました。

僧侶は夜になり、一夜の宿を求めて地区内の家々を巡りましたが、その僧侶のあまりに汚い風貌にどこも門前払いをしていました。

当家は元々お遍路さんにお接待をしていたようで、その様子を見ていた当家の家人がお接待の精神で、その僧侶に粗末な食事と寝所を用意したところ、ひどく感激されました。

そして翌日、旅立つ際に当家敷地を一通り見回り、ある場所に立ち止まりました。

そこを持っている錫杖で数回地面をたたいたところ、水が湧いてきました。

僧侶は家人に「この水が湧いた場所に井戸を掘り、その横で砂を入れた箱を用意し、そこに足形をとってその足形にお灸をするように。そうすればたちまち病は治まり1年間無病息災が約束されるでしょう。但し彼岸の中日に毎年二回行うこと」といい残し当家を去りました。

半信半疑の家人はまず井戸を作り、その横に砂を入れた箱を置きました。

さしあたり、足のたたない高齢の家人に言われた通りの行を行ってみたところ、不思議なことに寝たきりだった家人がたちまち回復し、立ち上がる事ができました。

それを聞いた近所の人々にもその行を施したところ、たちまち病気が回復し、それが口伝により瞬く間に四国中に広がっていきました。

以降戦争の際に中断はあったようですが現在に至るまで彼岸の中日年二回行っています。

現在の秋分の日春分の日に行う形となったのは明治以降と思われます。

由来となった井戸は、砂灸を行うようになってすぐに水は涸れたと言われていますので

現在は残っていません。

弘法大師が地面を杖でついたところに水が出た、と言う「弘法の井戸」と言われる井戸の伝説は全国各地に点在しますが、同じ法力を持った僧侶が当家に立ち寄ったものと思われます。

そのおかげか当家は途切れることもなく、代々この行事を過去六代にわたり伝承できております。

さて行の作法ですが、まず祭壇にお心付けのお賽銭を入れていただき()南無(なむ)大師(だいし)遍照(へんじょう)金剛(こんごう)」と唱えどこを治してほしいかをお大師さんにお伝えください。

その後、裏へお回りいただき砂の上に足を置いてください。足形にわらを置きそこにお灸をいたします。

砂灸は信心ですが、遠路を当家まで来て施してもらう、という修行の一面がございます。

病気で本人が来られない場合の代参ももちろん歓迎いたしますが、できるだけおいでいただく方が功徳はあるとされています。

合掌

勝野家当主